2025/11/21
パートコロナ処理で必要部分だけ表面改質
フィルム機能を守る部分処理技術の事例紹介
大槻工業株式会社では、プラスチックフィルムに求められる機能性を引き出すための 表面処理・表面改質 を専門としています。
なかでも「パートコロナ処理(部分コロナ処理)」は、必要な箇所だけを選択的に処理し、その他の部分は素材本来の特性を保持できる高度な加工技術です。

この記事では、実際に寄せられた課題に対してパートコロナ処理で解決した 2つの事例 をご紹介します。
パートコロナ処理とは?|求める箇所のみ狙って表面改質する技術
通常のコロナ処理はフィルム全面に放電させて改質しますが、パートコロナ処理では 電極位置や放電領域を精密に制御 することで、
・両端のみ
・中央のみ
・特定ライン部のみ
といった 部分的な表面改質 が可能です。
この技術により、
「フィルムの別部分に異なる機能を同時に持たせたい」
という高度な製品設計にも対応できます。
事例①|PETフィルムの両端だけ密着性を向上させたい
お客様の課題
粘着塗工工程で、以下のような問題がありました
・粘着剤をフィルムの 両端部のみ に塗工したい
・そのため両端は濡れ性・密着性を高める必要がある
・しかし中央部まで処理すると、フィルム特性が低下し製品として成り立たない
・過去に全面コロナ処理を試した際、中央部の機能性が損なわれてしまった
つまり
「両端は強い密着性、中央は無処理で特性を保持したい」
という非常に繊細な仕様でした。
当社のヒアリングで判明した背景
・中央部は透明フィルム本来の機能を活かしたい
・わずかな表面改質でも後工程の性能に影響する
・過去の全面処理で不具合経験があり、部分処理を強く希望
当社の提案と加工内容
当社は パートコロナ処理 を提案。
・MD方向に対し、両端部のみ 正確に放電処理
・電極配置を調整し、中央部分には一切放電がかからない設計
・試作段階で濡れ性テストと粘着付着強度を評価
・フィルム特性を損なわず、必要箇所だけ密着性を向上
成果
・お客様は「これまで実現できなかった製品設計が可能になった」と高く評価
・歩留まりが改善、製品の信頼性も向上
・フィルムの 部分的な機能付与 により製品設計の自由度が拡大
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事例②|PEフィルムの中央部だけヌレ性を向上して印刷適性を高めたい
お客様の課題
包装資材の開発で、以下のような要望がありました
・両端部はヒートシール工程で使用するため未処理で残したい
・中央部には印刷を行うため、インキ密着性を高める必要がある
・全面処理すると両端のヒートシール特性が変化し、シール強度が低下してしまう
・印刷品質とシール強度を両立したい
ヒアリングで分かった背景
・印刷方式はグラビア印刷で、ヌレ性不足だと滲み・剥がれが発生
・ヒートシール部の特性変化は致命的
・過去に全面処理を試した際、シール強度の低下で商品化を断念
当社の提案と加工内容
当社は 中央領域のみパートコロナ処理 を実施。
・幅方向の中央だけに限定して処理
・両端には放電が一切かからないよう電極を最適設計
・印刷テストを行い、インキ密着性・濡れ性・発色を評価
・シール強度の維持も確認
成果
・中央部分でインキ定着性が大幅に改善
・印刷品質が安定し発色も向上
・両端部のヒートシール強度は従来通りのまま
・印刷とシールの“相反する機能”を1枚のフィルムで両立
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まとめ|パートコロナ処理はフィルム設計の自由度を大きく広げる技術
紹介した2つの事例のように、パートコロナ処理は
・必要な部分だけに機能を付与
・不要な部分は素材特性を保持
・複雑な仕様にも柔軟に対応
できる非常に実用的な表面改質技術です。
例えば、
・両端だけ処理して粘着性UP
・中央だけ処理して印刷適性UP
・印刷部のみ濡れ性向上、裏面は粘着特性維持
など、多様な課題に対応できます。
大槻工業株式会社は、今後もヒアリングを重視し、お客様に最適な加工方法をご提案してまいります。
実際の放電幅や許容公差は材質や条件により異なりますので、詳細はお気軽にご相談ください。
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