2026/08/19

プラスチックフィルムへの印刷やラミネート、コーティング工程で、「インキが密着しない」「接着剤が剥がれる」「塗工した材料が均一に広がらない」といった問題が発生することがあります。
こうしたフィルムの密着不良を改善する方法の一つが「コロナ処理」です。
しかし、コロナ処理を行えば必ず密着性が改善するとは限りません。
フィルムの素材、表面状態、処理後の保管期間、印刷・接着材料との相性など、さまざまな要因を確認する必要があります。
この記事では、プラスチックフィルムの密着不良が起こる原因と、コロナ処理による表面改質の考え方、さらに改善するためのポイントを解説します。
1.そもそも、なぜプラスチックフィルムは密着しにくいのか?

PET、PP、PEなどのプラスチックフィルムは、軽量で加工性に優れている一方、素材によっては表面の濡れ性が低く、インキや接着剤などが十分に濡れ広がらないことがあります。
例えば、フィルム表面にインキを塗布した際、
濡れ性が低い
↓
インキがフィルム表面に広がりにくい
↓
接触面積が十分に確保できない
↓
密着性が不足する
という状態になることがあります。
そのため、印刷やラミネートなどの後工程を安定させるためには、フィルム表面の状態を適切に管理することが重要です。
2.コロナ処理とは?フィルムの表面を改質する技術
コロナ処理とは、高電圧によるコロナ放電を利用して、プラスチックフィルムの表面を改質する処理です。
コロナ放電によってフィルム表面に作用し、表面の濡れ性を向上させることで、インキや接着剤などがフィルム表面に広がりやすくなります。
つまり、
コロナ処理
→ 表面改質
→ 濡れ性向上
→ インキ・接着剤などが広がりやすくなる
→ 密着性向上につながる
というのが基本的な考え方です。
ただし、ここで注意したいのは、「濡れ性が高くなった=必ず強固に密着する」ではないということです。
実際の密着性には、フィルム素材、インキ、接着剤、コーティング材料、加工条件なども関係します。
3.コロナ処理をしても密着不良が起こる原因

「コロナ処理をしたのに密着しない」という場合には、いくつかの原因が考えられます。
① コロナ処理の効果が十分でない
フィルムの種類や加工条件などによって、必要となる表面状態は異なります。
そのため、単純に「処理した・していない」だけではなく、処理後の表面状態を確認することが重要です。
② コロナ処理後に時間が経過している
コロナ処理によって変化したフィルム表面は、時間の経過とともに元の状態に戻ろうとする傾向があります。
これがコロナ処理の経時変化です。
処理直後には問題がなかったフィルムでも、保管期間が長くなった後に印刷やラミネートを行うと、密着性に違いが生じる場合があります。
そのため、処理から後工程までの時間を考慮した工程管理が重要になります。
コロナ処理されたフィルムを適切に保管することにより、コロナ処理効果を持続させ経時変化を遅らせることが出来ます。
③ フィルム表面に汚れや異物がある
コロナ処理を行っても、フィルム表面に油分、添加剤、ホコリなどが存在すると、インキや接着剤がフィルムに十分接触できない場合があります。
つまり、
表面改質の問題なのか?
それとも表面の汚染が原因なのか?
を切り分けることが重要です。
4.コロナ処理の効果を確認する方法

コロナ処理後の表面状態を確認する方法として、表面ヌレ張力の測定があります。
一般的にはダインペンや試験液などを用いて、フィルム表面の濡れ性を確認します。
ただし、数値が高ければ必ず製品として良好とは限りません。
例えば、
・使用するインキ
・接着剤
・コーティング剤
・フィルム素材
・後工程までの時間
などによって、必要となる表面状態は変わります。
そのため、表面ヌレ張力の確認と、実際の印刷・接着・塗工性能の確認を組み合わせることが重要です。
5.コロナ処理の経時変化にも注意

コロナ処理で特に注意したいのが経時変化です。
処理直後は高い濡れ性を示していても、時間の経過とともに表面状態が変化することがあります。
さらに、
・保管温度
・湿度
・フィルムの素材
・添加剤
・保管状態
・処理から後工程までの時間
なども影響する可能性があります。
そのため、コロナ処理を採用する場合には、「処理条件」だけでなく「処理後のフィルムをいつ、どのように使用するか」まで考えることが大切です。
6.それでも密着しない場合は「易接着コート」という選択肢も

コロナ処理を行っても要求される密着性や耐久性が得られない場合には、易接着コート(アンカー加工・プライマー加工)を検討する方法もあります。
コロナ処理がフィルム表面を改質する方法であるのに対し、易接着コートではフィルム表面にコーティング層を形成し、後工程との密着性を考慮した表面を設計します。
7.密着不良でお困りなら、原因を一つずつ切り分ける

フィルムの密着不良は、「コロナ処理が弱い」という一つの原因だけで発生するとは限りません。
まずは、
①フィルム素材
↓
②フィルム表面の状態
↓
③コロナ処理の有無・状態
↓
④処理後の経過時間
↓
⑤インキ・接着剤・コーティング剤
↓
⑥印刷・ラミネートなどの加工条件
というように、工程全体を確認することが重要です。
特に「以前は問題なかったのに、最近密着不良が発生した」というケースでは、フィルムや材料だけでなく、保管条件や処理から後工程までの時間も確認してみるとよいでしょう。
8.大槻工業株式会社のフィルム受託加工

大槻工業株式会社は、プラスチックフィルムへの表面加工を行うフィルムコンバーターです。
コロナ処理をはじめ、フィルムの用途や後工程に応じた表面加工について、受託加工として対応しています。
フィルム加工では、単純に「コロナ処理をすればよい」というケースばかりではありません。
「印刷が密着しない」
「ラミネート強度を安定させたい」
「フィルム表面の濡れ性を改善したい」
「現在の処理方法で問題が解決しない」
といった場合には、フィルムの素材・用途・後工程を含めて加工方法を検討することが重要です。
大槻工業株式会社では、こうしたフィルム加工に関する課題について、受託加工メーカーとしてご相談いただけます。
まとめ|コロナ処理は「処理すること」より「どう使うか」が重要

プラスチックフィルムの密着不良を改善するうえで、コロナ処理は重要な表面改質技術の一つです。
一方で、コロナ処理だけですべての密着問題を解決できるわけではありません。
重要なのは、
・フィルム素材を確認する
・表面の濡れ性を確認する
・コロナ処理後の経時変化を考慮する
・汚れや異物などの影響を確認する
・インキ・接着剤との相性を確認する
・必要に応じて易接着コートなどを検討する
という総合的な視点です。
「コロナ処理をしているのに密着しない」という場合には、原因を一つずつ切り分けることで、改善の糸口が見つかる可能性があります。
フィルムの表面処理やコロナ処理、密着性に関する課題がございましたら、大槻工業株式会社へご相談ください。


